名著の第一話
私が愛読している鍼灸書の中に、
「お灸で病気を治した話 灸堂臨床余禄」深谷伊三郎著
というものがあります。

これは『昭和の名灸師』といわれた深谷伊三郎先生が
ご自身の臨床をもとに綴った治験例の記録です。
鍼灸の専門書として実に有用ですが、深谷先生独特の語り口がとても面白く
また文章の端々に昭和という時代が透けて見え、読み物としても魅力的な本です。

その第一回の症例が「ひょうそ」。

最近ではほとんど耳にすることがないのではないかと思われますが、広辞苑によると

「ひょうそ:手指・足指の化膿性炎症。疼痛が甚だしく、深部に進行して
骨に波及する傾向がつよく、しばしば壊疽(えそ)を来す。」

とあります。

第一話に取り上げられるくらいですから、当時としてはよく見られる病気だったのでしょう。
ちなみに「お灸で病気を治した話」の初版は昭和41年5月21日となっています。
私が生まれる前、ですね。

まあ自分が「ひょうそ」の患者さんを診ることはないだろう、
と思い軽く読み流してしまったのですが、聞きなれない妙な病名だったので
何となく頭の片隅にひっかかっていました。

ひょうその患者さんが来た!
2012年も押し迫った12月29日、治療室そらの年内最終営業日のことです。
体のお手入れに定期的にマッサージを受けにくる女性患者さんが来院しました。
この方は、特につらい症状がなければ全身のマッサージを希望することが
多いのですが、この日は違いました。

「ちょっとこれ、鍼灸で何とかならない?」
と差し出された右手の親指を見ると、関節が青紫色に腫れ上がり
見るからに痛そうな状態です。

こちらに来る前に皮膚科を受診し、塗り薬と飲み薬を処方されたのですが、
すぐには痛みが取れず、利き手の親指のため、年末の大掃除など家事が出来なくて
困る、との訴えです。

う~ん、困りました。大体これは何という病気なんだろう…。
指先の腫れ、関節の腫れ、腫れと痛み、他に合併している症状はなさそう、
などと考えていると…。

「もしやこれはひょうそでは?」と思いつきました。
ひょうそならお灸で対応できそうです。

さっそく患者さんにお灸を提案すると、快諾してくださいました。

いざひょうそのお灸治療!です。

(続く)


湘南台の鍼灸・マッサージ 治療室そら



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