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2012.06.22 名人の言葉②
名人の言葉

「どれ、ちょっと君たちの手をみせてごらん」

という男性の声に振り向くと、やさしそうな老紳士が微笑んでいました。

近くにいた若手鍼灸師が順番に手を見てもらう事になり、
「どこかで見たような顔だなあ」と思いながら、
私も後ろの方にならびました。

「あなたは何年くらい臨床をしているの?」
「うんうん、頑張ってくださいね」
と老紳士がならんだ若手に声をかけています。

しばらくして私の順番が来ました。
「よろしくお願いします」
と挨拶をして、手をさわってもらいました。

老紳士は私の手を柔らかく握ったり、指先をさわったりしたあとに
こう言いました。

「うん、君はいい手をしているね。柔らかくて実にいい手だ。」

その言葉を聞いて単純な私は酔いも手伝い、はるか上空まで舞い上がりました。
「そうか、私の手はいい手なんだ。名人が言うのだからきっとそうなんだ。
よお~し、頑張ってよい治療家になるぞ~!!!」
とその場で誓いをたてたのでした。

紫陽花2012


言葉の力

あれから数年たった今、日々臨床にたずさわる中で
言葉の大切さが少しずつ分かってきました。

何気ない
「もう歳だからしょうがないね」
という言葉で人はがっくりと肩を落とすことがあります。

一方で
「良い手だ」
という一言で人は根拠のない自信を持ち、おおいに発奮することもあるのです。

名人、といわれる人は技術だけに長けているのではないのだ、
と思い知らされました。

鍼灸師として、治療に全力を注ぐことは当たり前ですが、
名人が私にかけてくれた一言のように、患者さんのこころの片隅を
少しでも明るく温めるような言葉をかける事が出来る…、
そんな治療家になりたいと私は思っています。

それにしても名人の手にはとてもあたたかく、そしてやわらかく、
ずっと触れていたいような気持ちのよさがありました。
あの手で触れられたら、鍼を刺さなくても病気が治ってしまいそうな気がします。


一度お会いしただけで私が勝手に心の師と仰ぐ名人は、
今も中部地方で活躍されています。




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