痛いのは利き手

2012年最後の営業日に来院した「ひょうそ」の患者さん。

通常なら「明日も来てください」とお伝えするところですが、
治療室そらも明日から年末年始の休暇に入ってしまいます。

そこで少量のもぐさを渡して、お灸のすえ方を簡単に説明し、
「毎日家族の誰かにお灸をすえてもらってください」
とお願いしました。

紫色にはれて、激しい痛みが出ているのは利き手である右手です。

ご家族の協力を得られるといいのですが…。

娘さん、大いに奮闘す
2013年の営業開始2日目、この患者さんが来院しました。

昨年末腫れ上がっていた親指を見ると…

おお、見事に腫れがひいているではないですか!
若干色は残っているものの、夜間も痛まないし、動かしても問題ないとのこと。

休みの間毎日娘さんにお灸をすえてもらっていたそうです。

娘さんは初めてのお灸で、だいぶ苦労したようです。

まず、もぐさを小さくひねることが出来ない(米粒より少し小さいサイズが標準です)

どうにかもぐさの形を整えても、今度は爪の上にあるツボにうまく置けない
(この場合はツボを綿花で湿らせたりします)

次にツボにおいたもぐさに線香で点火するのですが、
もぐさが線香にくっついてきてしまう(業界では「ちょうちん」といいます)
などなど…。

患者さん曰く、
「一見簡単そうに見えるけど、やってみると案外難しいのね」

はい。手際よくお灸をすえるには少し練習が必要です。

熱くなったら治ります

症状に適したツボに毎日お灸をすえていると、初めは何壮すえてもなかなか熱さを感じなかったのが、
症状が治まるにつれ、少ない数でも熱さを感じるようになってきます。

患者さんには
「1壮で熱く感じたら終了です」
と伝えておきました。

娘さんにお灸をすえてもらうこと数日、1週間たたずに1壮で熱さを感じるようになったとのこと。
同時に症状もほぼ治まったようです。めでたし。

「それにしても、この歳になってまさか娘に灸をすえられるとは思わなかったわよ(笑)」
と患者さん。

「本当は娘さん、もぐさを小さくひねれないなんていいながら
わざと大きいお灸をすえてたんじゃないですか(笑)」
と私。

親子でわ~わ~と騒ぎながらお灸をすえてる様子は
なんとなくほのぼのとしていいものだな、と思いました。
お灸も思わぬところで役に立つものです。

また機会があれば、自宅で出来る鍼灸療法をアップしていきたいと思います。

湘南台の鍼灸・マッサージ 治療室そら








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ひょうそのツボはどこだ?
2012年最後の営業日に来院した患者さんの青紫色に腫れ上がった親指。
痛みはかなり強い、とのことです。
診察の結果、ひょうそのようなので、お灸をすえてみることにしました。

記憶をたぐっていくと、たしかツボは爪の上だったかと…。
(患者さんの指は写真に撮れなかったので私の手です)
足心道柴田家庭健康術のつぼ。

合わせて「合谷」(ごうこく)というツボを使うことにしました。
合谷。

合谷に限らず、手や足の先のほうにあるツボにお灸をすえると
かなりきつく熱さを感じます。
そのことを患者さんに伝えると、「良くなるなら我慢する」と
おっしゃるので挑戦してみることにしました。

熱くなければ熱くなるまで
さて、施灸開始です。まずは爪の上に恐る恐る1壮、半米粒大ですえてみます。

私:「いかがですか?」
患者さん:「全然熱くないです。何も感じませんよ。」

どうやらツボは間違っていないようです。

お灸で病気が治る経験された方はわかると思いますが、
適切なツボにお灸をすえると全く熱さを感じないことがあります。
皮膚はしっかり(?)やけどしているにも関わらず、です。

そのような場合は、
「熱くなるまですえるのだ」
と昭和の名灸師、深谷伊三郎先生は言っています。

本来なら灸をすえられて熱いはずですが、それが熱くないということは
体が何かしらの変調をきたしている、という事のようです。
そしてそのような反応が出ているところが「ツボ」だ、と。

深谷先生の教えに従い、どんどんお灸をすえていきます。
20壮ほどすえた時でしょうか。
「あ、熱いっ!」
と患者さんがのけぞりました。
ようやく熱が透ったようです(たくさん灸をすえて初めて熱さを感じた時「熱が透った(とおった)」と
言います)。

さらに合谷に7壮。ここは比較的早く熱さを感じることが出来ました。

施灸の直後、「まだ痛みはあるけど、指が曲がるようになった」と
おっしゃっていました。

ここからが勝負です。
1壮すえるだけで「熱いっ!」となるまですえ続けなければなりません。

が、治療室そらは明日から年末年始の休暇に入ってしまいます。
さあ、どうする…?

(つづく)









名著の第一話
私が愛読している鍼灸書の中に、
「お灸で病気を治した話 灸堂臨床余禄」深谷伊三郎著
というものがあります。

これは『昭和の名灸師』といわれた深谷伊三郎先生が
ご自身の臨床をもとに綴った治験例の記録です。
鍼灸の専門書として実に有用ですが、深谷先生独特の語り口がとても面白く
また文章の端々に昭和という時代が透けて見え、読み物としても魅力的な本です。

その第一回の症例が「ひょうそ」。

最近ではほとんど耳にすることがないのではないかと思われますが、広辞苑によると

「ひょうそ:手指・足指の化膿性炎症。疼痛が甚だしく、深部に進行して
骨に波及する傾向がつよく、しばしば壊疽(えそ)を来す。」

とあります。

第一話に取り上げられるくらいですから、当時としてはよく見られる病気だったのでしょう。
ちなみに「お灸で病気を治した話」の初版は昭和41年5月21日となっています。
私が生まれる前、ですね。

まあ自分が「ひょうそ」の患者さんを診ることはないだろう、
と思い軽く読み流してしまったのですが、聞きなれない妙な病名だったので
何となく頭の片隅にひっかかっていました。

ひょうその患者さんが来た!
2012年も押し迫った12月29日、治療室そらの年内最終営業日のことです。
体のお手入れに定期的にマッサージを受けにくる女性患者さんが来院しました。
この方は、特につらい症状がなければ全身のマッサージを希望することが
多いのですが、この日は違いました。

「ちょっとこれ、鍼灸で何とかならない?」
と差し出された右手の親指を見ると、関節が青紫色に腫れ上がり
見るからに痛そうな状態です。

こちらに来る前に皮膚科を受診し、塗り薬と飲み薬を処方されたのですが、
すぐには痛みが取れず、利き手の親指のため、年末の大掃除など家事が出来なくて
困る、との訴えです。

う~ん、困りました。大体これは何という病気なんだろう…。
指先の腫れ、関節の腫れ、腫れと痛み、他に合併している症状はなさそう、
などと考えていると…。

「もしやこれはひょうそでは?」と思いつきました。
ひょうそならお灸で対応できそうです。

さっそく患者さんにお灸を提案すると、快諾してくださいました。

いざひょうそのお灸治療!です。

(続く)


湘南台の鍼灸・マッサージ 治療室そら



鍼灸院に来る患者さんの主訴は、「肩こり・腰痛」がもっとも多いと思います。
皆さんの鍼灸治療の適応疾患のイメージもだいたい同じではないでしょうか。
実はそれ以外にも、胃痛・生理痛など内臓に原因があるものもふくめて
「痛みを軽減する」ことは鍼灸の得意とするところです。

先日慢性的な胃の痛みの治療に来ている患者さんが、ひどく足を引きずりながら来院しました。
訳をたずねると、「今朝買い物に行く時に自転車のペダルを踏み外してしまい、
足首の後ろの方をペダルに強くぶつけてしまった」との事。

早速見せてもらうと、左足首の外側が青く腫れています。
(この時写真を撮っておけばよかったのですが、失念してしまいました)

じっとしていてもズキズキと痛むので何とかならないか、
と言われたので、こちらも治療させていただくことに。
足関節打撲の図
写真がないのでへたくそな図で。
足関節の後外方からペダルがぶつかったらしく、アキレス腱から外くるぶしにかけて
ぽっこりと腫れていました。
炎症による腫れと痛みを軽くするために、図のバツ印を囲むように
浅く鍼を刺して10分ほど置きます。
その後鍼を抜き、今度はごく小さくひねった灸を同じように腫れた部分の周囲にすえていきます。

治療終了後、入浴をひかえる事やRICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)
を行う事などの注意点をお話しして、
翌日もう一度来院して経過を見せてもらうことになりました。



翌日の状態。腫れている部分とそうではない部分の境界があいまいになり、
内出血が広がっていますが、腫れはかなり減っています。
足関節打撲③

患者さん曰く、「昨日治療を受けた帰りはまだズキズキと痛んだが、
夕方くらいにふと気づいたらあまり痛くないので、足を見たら腫れも小さくなっていた」
とのこと。

この日は鍼の数を少し減らしてみました。

お灸は腫れている部分のまわりを探り、圧痛の強い部分にのみ糸状灸で各1壮だけすえました。
足関節打撲⑦

施術終了後、「ほとんど痛みがなくなり、歩くにも差し障りがない」
とのことだったので、足の治療は2回で終了としました。
「鍼灸でこんな怪我の痛みも軽くなるのねぇ。不思議だわ…。」
とのご感想をいただきました。


今回の症例は、初回受診時の検査と経過から、
靭帯損傷や骨折など重度の損傷はなかったと思われます。
鍼灸が不適応と考えられる場合は、専門医への受診をおすすめしています。

名人は1週間もかからない?
運よく(?)友人のお子さんがウオノメだと聞いたので、早速治験を依頼しました。
聞けば歩くときに相当痛いらしく、ウオノメのまわりに衝撃を和らげるパッドのようなものを貼って通学しているとのことです。
昭和の名灸師深谷伊三郎先生の本を見ると、「三日から五日間ぐらいのうちにポロリととれて、きれいに治ってしまう。」とあります。これなら楽々、です。早く治して思う存分走り回って遊んでもらいたいものです。
ということで、友人は自分の子供に即日ウオノメへの施灸を開始しました。
「すぐ治るよ」とささやきながら…。

全然とれないのです
それから2週間後友人にとれたかどうか確認すると、
「全然とれん。それどころかお灸で焼いたところが巨大化してきた。」とのこと。
友人によると、熱量が足りないのかと思い、もぐさのひねりを固くしてみたり、1回にすえる数を増やしてみたりしているのですが、なかなか手ごわいとのこと。子供もだんだん飽きてきて、治療に非協力的になりつつあるようです。成書を今一度読み直してみましたが、方法に大きな間違いはないようです。名人と何が違うのだろう?悩みつつ友人の施灸は続きました。

取りあえずウオノメを見に行ってみる
友人がウオノメの施灸を開始してからちょうど1か月たちました。
その日は勉強会かねがね友人宅にお邪魔することになっていたので、学校から帰宅したお子さんの足を見せてもらう事にしました。

見事に焦げてます。
魚の目
見た目は痛そうですが、本人に聞いてみると「歩いても痛くないよ」と言っています。
ちょっと触らせてもらうと、今にも取れそうな感じです。
よし、これはもう末期に違いない。とどめをさそう!という事で、その場で施灸を開始しました。

魚の目3
このもぐさの大きさでもまったく熱さは感じません。

実際にやってみることの大切さ
この日友人宅を辞し、自宅で夕食をとっているとメールが来ました。
「見事にとれました」とのタイトルに添付されていた画像を見ると、きれいにとれています。
ウオノメとれた!
その日の夜、風呂上りにわりと簡単にはがれたそうです。画像ではちょっと分かりにくいですが、焦げた皮ふがはがれたところは少しくぼんでいて、どうやら芯も取れているようです。
1か月にわたる地道な施灸がついに実を結びました。

今回はこの友人のおかげで「ウオノメはお灸で治せる」という事と「治せるが、時間はかかる」という事が実体験として分かりました。
もう一つ、「成書にあるとおりに治るとは限らない」という事を再認識することが出来たのも貴重な経験になりました。

やはり深谷伊三郎先生の言う通り、「どんなつまらないことでも」やってみるものです。